「フランス料理はソースが命」。

と言われていたのは一昔前のことで、最近はソースをきちんと作るフランス料理店は少なくなってきました。

これには料理により軽さを求める現代人の嗜好(とそれに応えようとするお店の姿勢)もあると思いますし、昨今のファストフード全盛で、ソースをきちんと作ったフランス料理を食べる機会自体が減っていることも原因にあると思います。

また何より、ソースをまともに作ってしまうと原価が一気に上がってしまいます。
なので、これにはソースを使わずにお客様を満足させられるに越したことは無いという、経営側の思惑も見え隠れします。

ただ、きちんと素材から出汁(フォン)をひき、ワインやリキュール、香草、ビネガーなどを加えて構成される百花繚乱のソース達。

これはやはりフランス料理ならではの魅力だと思いますし、「出汁」を重んじる日本の食とも通ずるものがあるように店主は思います。

例えば今回赤平の鳩(エルムピジョン)と合わせてみたのは「ソース・グランヴヌール」です。
通常は鹿など赤身の肉に合わせることが多いソースですが、鴨や鳩に使うこともあります。

よく見かけるレシピはジビエの出汁に赤ワインとグロゼイユ(赤すぐり)のジャムを合わせたものですが、より甘酸っぱさを強調したいと思いカシスリキュールと赤ワインビネガーを使いました。

クラシックなレシピだと基本のソース・ポワヴラードに生クリームを…とか話し出すとマニアックになり過ぎてしまうのでやめておきますが(笑)、今回作ったソースは先日作った赤ワイン主体のものよりも遥かに鳩との相性が良かったです。

赤身のジビエには甘酸っぱいソース、というのはフレンチの基本法則のようなものなんですが、飼育とはいえ味にしっかりした個性のある鳩もこのソースとの相性は良好なようです。

ちなみに、骨から取った出汁と肉汁(ジュ)をメインにして作る軽いソースだとブルゴーニュに合わせやすくなります。

一方今回のようにしっかりしたソースの場合はボルドーの方が合わせやすいですね。

勿論100%そうというわけではなく、ボルドーでも軽めのものであればジュをメインにしたソースでも合いますし、ブルゴーニュでも熟成して香りに複雑さが増したものだと濃いソースでもいけます。

外食というのは「初めての体験」を楽しむ場であるともいえますので、セオリーにこだわらず自由な発想で色々と合わせてみるのも楽しいんじゃないかな、と個人的には思います。

手前味噌ですが、この鳩とこのソースは美味しいですよ。是非皆様に楽しんで頂きたいです。

末筆になりますが、コロナウイルスの件が落ち着くまで、不特定多数のお客様が出入りする惣菜販売の方は一時ストップして、予約ディナーの方をメインにしようかな、とも考えています。

実は縁あって100年ほど前の非常に貴重なカトラリーを手に入れているのですが、この修理がまだ終わっていないこともあって(3月末頃に修理完了予定…でしたが、2020年6月16日現在もまだ修理中…。古いものなのでなかなか大変なようです)、積極的にディナーの方はアピールせずにいました。

ただ、このような状況がずっと続くと経済も停滞してしまいますし、市民生活そのものも暗~くなってしまいますよね。

それはちょっと悲しいよなぁと。

当店のディナーは1日に1組限定で、いわゆる「大勢の人の集まるところ」にはなりにくい(上の写真でもわかる通り、最大でも4人)ですから、こういう時は業態を少し変えてディナーメインにした方が安心して皆様に楽しんでもらえるのかなと。

まぁ店主自身が感染していたら元も子も無い話ですが(苦笑)、幸いにして熱も咳も出ておらず健康状態は良好です。

ニュースで情勢をチェックしつつ、どういったスタイルにするか少し検討してみますので、よろしくお願いいたします。

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