「シャトー・ラトゥール 1998」に「リエーヴル・ア・ラ・ロワイヤル」を合わせる会に参加してきました。

先日より、感染症対策を整えた上で東京に来ています。
(店主の持ち込んだ衛生用品はこちら↓)

目的は東京八丁堀の「ブラッスリー・ギョラン」さんで開催される「野ウサギのロワイヤルとシャトー・ラトゥールを楽しむ会」に参加すること。

こちらのお店は店主の配慮で空間除菌(https://www.nac-with.com/evary/)も導入しており、きちんとお客様の健康に配慮しつつ経済を停滞させないよう頑張っていると感じ、(時期が時期なのでやはり迷いましたが)決断して行ってきました。

「シャトー・ラトゥール」は言わずと知れた五大シャトーの一角。

で、このラトゥールにフランス古典料理の最高峰「リエーヴル・ア・ラ・ロワイヤル」を合わせるというのがイベントの趣旨なのですが、そもそも「リエーヴルってなんやねん」という方が大半だと思うのでご説明をば。

まず「リエーヴル」とは「ノウサギ」のことです。
フランスに限らず、ウサギは世界中で家畜化されていて調理法も数限りなくありますが、家畜化されたウサギはフランス語で「ラパン」と呼ばれ、肉の色も白く野ウサギとは全く別物の食材です。

当店の3月・4月の料理にもラパンを使う予定(コロナウイルスの影響を鑑み、2週間ほどお惣菜の販売はお休みする予定です)でして、白身でありながらムチッとした食感と詰まった旨味を楽しんで頂けるかと思います。
実にあっさりしていてどなたでも食べやすいので、店頭で見かけたら是非。フランスアジャン産の無農薬栽培プラムと合わせて、テリーヌ仕立てにするつもりです。

こんな感じです(↑)。4月はコロナの影響で自粛してしまったため、提供期間わずか1か月の短命なテリーヌに終わってしまいました…(2020年6月21日追記)。

さて、一方のリエーヴルですが、こちらは白身どころかどす黒いほどの赤身。
デリケートな火入れを怠ると途端にパッサパサに硬くなり、熟成させるとかなり強烈な臭いを発します。

臭くて硬くてパサつく(おまけになかなか手に入らず原価も高い)という、料理人にとってはできれば扱いたくない食材でありながら、調理法次第で「異様とも言える美味さ」に昇華させられるのがリエーヴルの悪魔的な魅力。

フランス料理のシェフにとって、リエーヴルは自分の能力が試される恐怖の食材でありながら、その一方で強い崇拝の対象でもあるのです。

そんなリエーヴルを使った料理で、間違いなく最高峰の技術が要されるのが「リエーヴル・ア・ラ・ロワイヤル」。

リエーヴルを1枚に開いて骨を全て取り外し、モモ肉と前脚肉の角切り、心臓やレバーなどの内臓類をたっぷりの赤ワインとブランデーでマリネし一晩。捌く際に出た血液はブランデーと混ぜた上で別途取り置きます。

次の日にモモ肉の一部と内臓をミンチにし、ダイスにカットしたフォアグラやトリュフを混ぜ込んでファルス(詰め物)を作ります。

このファルスを1枚に開いてマリネしたリエーヴルに載せ、ロール状に包んでタコ糸で縫いとめます。

骨はしっかりと香ばしく焼き上げてフォン(出汁)を取り、マリネに使った赤ワインと合わせてロール状にしたリエーヴルを沈めコトコト煮込みます。

この時煮込み過ぎると硬くなってしまうので、しっとり火が入る程度にとどめ、熟成させるため煮汁に付けたまま寝かせること数日。

良い味になった頃合いで煮汁から取り出し、1人前にカットして個別にパッキング。

で、お店で提供する際は一人分の分量を小鍋で湯煎して温め、煮詰めた煮汁はブランデーと血液を混ぜた液体でつなぎます。

するとこのように、チョコレートのような色合いが特徴的な濃厚かつ複雑な旨味を持ったソースが出来上がるので、これをかけた上で提供するわけです。

たっぷり使用されたフォアグラとトリュフ、ブランデー、赤ワインのお蔭で、リエーヴルの持つ臭みは芳醇な「香り」に変わり、濃厚な赤ワインと合わせることでこれがまぁとんでもなく美味いものになります(急に表現がざっくりした感じになってすみません)。

ただ、上記の通り手順が非常に複雑で、かつ高級食材オンパレードなので単価も高くなります。
ついでにかなり濃厚な料理なので合わせるワインも強くないと簡単に負けてしまいます。
すると料金は跳ね上がり、食べられる人が減り、提供する機会も減るという。

いかがでしょうか。
こんな面倒で非経済的な料理、ちょっと頭のおかしくなった人しか提供できないことは自明の理です(笑)。

この時頂いたものは中のファルス(ミンチなどの詰め物)がミチミチになりすぎず、大量に使われたフォアグラとトリュフのおかげでジューシーでありながらホロホロとした食感でした。
そこにこの濃厚なソースを絡めて食べれば、まぁワインが進むこと進むこと。

普通の人からすると「おいおい…」という値段になってしまいましたが、こういう料理は食べる人も提供する人もいい意味で「普通じゃない」ですから、まあ良いのではないでしょうか(笑)。

ちなみに店主もリエーヴル・ア・ラ・ロワイヤルは何度か作ったことがあるため、狩猟の時期に運よくエゾユキウサギが獲れたらお店のディナーでも提供したいなと思っています。

ちなみにリエーヴル・ア・ラ・ロワイヤルには、こちらの筒状のタイプ(アリバブ風と言います)の他に、「セナトゥール・クトー風(クトー上院議員風)」という、煮込んだウサギの肉をほぐして盛り付けするタイプの2種類があります。

どちらも美味しいのですが、見た目的にはあまり映えないクトー上院議員風の方がソースとよく絡むので店主は好みだったりします。丸々一羽必要になるアリバブ風と違い、こちらは腿肉や前脚の肉を集めれば作れますしね。

ただ、初めて野ウサギを食べるという方には、まず背肉のローストを提供したいなぁと。

店主は野ウサギの背肉こそ赤身肉の最高峰だと思っておりまして、これはヒグマにヤマシギ、パロンブ(ヨーロッパに生息する大型の野性の鳩)など様々な赤身の肉を食べた今でも変わりません。

細い筋繊維がもたらす、蝦夷鹿やその他の肉ではありえないほどのしっとりとした食感と濃厚な旨味、これをまず味わって頂いた上で、いざ煮込み系にと向かって頂くのが順番としては良いかなと。

そもそも食材がレア過ぎてそうそう提供できる代物ではないのですが、来季の狩猟時期になったらまたウサギを追ってみますので楽しみにしていてください。

それではまた!

…あ、今回ブラッスリーギョランさんで頂いたお料理はこんな感じでした。

アミューズの「サクラエビのグジェール」。香ばしくてスターターとしてピッタリ。実に美味しかったです。

ツキノワグマのテリーヌ。ガメイ100%のチャーミングなワイン(しかし18年熟成)を合わせてもらったんですが、これがまたピッタリ。熊は臭いイメージがあるかもしれませんが、実際はかなりクリアな味わいなので素晴らしいチョイスだと思います。

フランス産ホワイトアスパラとミモレット、ポーチドエッグの組み合わせ。左手前に見えている白っぽい葉っぱは「タンポポ」です。フランスだと「ピサンリ」と呼びますが、陽に当てず柔らかく栽培したものを春の野菜として使います。ほろ苦さをポーチドエッグがまろやかに包んでくれて素晴らしい相性でした。

合わせたワインはアルザスのリースリング。透明感ある、でもボリュームもしっかりあるこのリースリングとの相性はバッチリでしたね。

天然ホタテのムニエルに濃厚なオマールのソースを合わせた温前菜。これは初めて食べる組み合わせだったんですが、合わせたワインも驚くなかれ、テンプラニーリョとシラーのブレンドでした(もちろん赤ワインです)。

翌日は別のお店でランチをしたんですが、そちらでもオマールとジュヴレ・シャンベルタンをソムリエさんが合わせてくれました。いやはや、予想外にもかなり合うんですよね。いい勉強になりました。

そしてメインが「リエーヴル・ア・ラ・ロワイヤル」。ラトゥールは流石、料理のパンチの強さに負けないパワフルな味わいでした。

今年(2020年)は当店でもロワイヤルを作ってみようかなと思いますが、トリュフもフォアグラもワインもブランデーも大量に使うので、原価だけでとんでもないことになりそうです(笑)。

ただ、この記事をLINEの投稿から書き写している現在(2020年6月21日)、「コラヴァン」という、ワインを劣化させずに抽出する機械を注文したところです。この機械を使えばグランヴァン(値段の張る偉大なワイン)をグラスで提供することができますから、本当のワイン好きでグルメな方のみご招待してロワイヤルをふるまうというのもありかもしれませんね。

コロナがもうちょっと収まってくれたら、また頻繁に東京へ行って色々勉強してきたいところです。それまではきちんと感染拡大を防止する行動をとっていきたいですね。

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