※ジビエ(野生鳥獣)を扱った内容なので、刺激的な画像がございます。苦手な方は閲覧されませんようよろしくお願いいたします。
こんにちは、メゾン・ブレイズです。
ジビエ(野生鳥獣)を使ったフランス料理はそれほど星の数ほどありますが、その中でも最もレアと言っても過言ではないジビエは果たして何でしょうか。
ヒグマ?
確かにヒグマはレアなジビエです。
ツキノワグマと違って雪が積もると獲れません(早い段階で冬眠してしまいます。また北海道の猟期は本州より早く終了します)から、狩猟期間がごく短いという意味でも非常に貴重ですし、その中から流通に乗り、かつ脂の乗った「状態の良いもの」となると、これひもう年に数頭もありません。
ただ、ヒグマはサイズが大きいです。
一頭獲れたら何十人前にもなります。
また、状態の良し悪しを別にすれば、北海道ではヒグマ大和煮の缶詰も出回っています。
口にすること自体がそこまで困難な食材というわけではないでしょう。
野うさぎ?
確かに、「王の皿」と呼ばれるフランス古典料理の最高峰「リエーヴル・ア・ラ・ロワイヤル」は野うさぎを使って作られます。
コニャック、アルマニャックといった高級ブランデーに大量のフォアグラとトリュフを使い、何本もの赤ワインを使って作られる非常に手間のかかる、かつお金もかかる料理です。
また現在野うさぎはフランスからの輸入も禁じられているため、北海道の雪ウサギか本州の野うさぎしか出回っていません。
しかし、野うさぎ猟は本州だと巻狩りの文化がまだ残っており、東北地方で獲れた野うさぎは首都圏だとわりかし出回っています。
猟師さんと懇意にしているフランス料理店だと、シーズンに数羽は使うという話はそれほど珍しくありません。
ヤマシギ(ベカス)?
「ジビエの王(または女王)」と呼ばれる、非常に希少な鳥です。
長い嘴を地面に突き刺しミミズや虫を食べるという食性がもたらす味の深さは、カモやヤマウズラ、キジといった他の鳥系ジビエに比べ雲泥の差があります。
何より胸肉はまるでビロードのように滑らかな質感と旨味で、ヤマシギの内臓をミンチにして濾した濃厚なソースと合わせると赤ワインを飲む手が止まらなくなります。
しかし、ヤマシギ自体はベルギーやイギリスなどからの輸入品が割と普通に出回っています。
国産のヤマシギとなるとレア度は格段にアップしますが、種類としてはヨーロッパのものとそう大差無いので、こちらも首都圏などに行けば食べること自体はそこまで難しくありません。
で、この記事のタイトルに戻りますが…一番レアなジビエとはズバリ、
「蝦夷雷鳥(エゾライチョウ)」
です。
まず、雷鳥そのものはヨーロッパからの輸入品が普通にあります。
しかし、蝦夷雷鳥はそもそもヨーロッパに生息「していない」ため、輸入品を手に入れることはできません。
かつ、蝦夷雷鳥は道内でも生息している地域がかなり限定されています。山林開発などで生息数は激減しており、今は道東のごく一部でしか見られない状況です。
その結果、1日に捕獲してよい数は僅か2羽に制限されており、かつ将来的には禁猟になることも予想されています。
また、蝦夷雷鳥の猟法は非常に特殊で、これを今に伝えている猟師さんもごく僅かです。
店主は幸いにして、現在80歳近くの老猟師さんに蝦夷雷鳥猟の流れを口頭で教わったのですが、猟師の高齢化もあり、他地域ではほぼ蝦夷雷鳥の猟法は失われていると言っても過言ではないでしょう。
食味もヨーロッパの雷鳥(こちらは赤身で、松の実のような風味がある独特の味わいです。取り寄せは可能です)とは全く異なり、蝦夷雷鳥の身は締まって淡白な白身。
でありながらキジのように強い臭いがあるわけではなく、ヤマウズラのような野趣溢れる感じでもなく、とにかく「上品」としか言いようのない味わいです。
またガラから取れる出汁もまた実に味が良く、ユリ根のような淡い風味の食材と合わせてポタージュ系のスープにすると絶品です。
都内のレストランで「蝦夷雷鳥はありますか?」と聞いて、「ありますよ」と答えてくれるレストランは100%!ありません。数年に一羽入れば御の字、というくらい稀な食材だからです。
よしんば運良くあったとしても、それが一見さんの口に入ることはなく、何年も待った常連さんが高級なワインと合わせてようやく頂くことのできる、そんなジビエが蝦夷雷鳥なのです。
当店でも運良く蝦夷雷鳥が獲れたら、特殊なジビエコースディナーを企画して提供できたらと考えています。
勿論他のジビエや変わった食材も美味しく調理して提供していきますので、是非楽しみにしていてくださいね。
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