世界一予約の取りにくいレストラン「NOMA」にもオンリストされた、ドメーヌ・タカヒコの曽我貴彦氏が醸すワイン。これが今回の旅の目的の一つでした。
氏の作るワインは国内外の関係者による評価も高く、今や説明不要とも言える人気・知名度を確立しています。
しかしながら生産本数が少なく、手に入れるのは至難の業。昨日伺った「veraison」でも、ドメーヌ・タカヒコのワインは提供されていませんでした。
しかしそんな希少なワインが、余市の「ジジヤ・ババヤ」というイタリアンレストランに行けば飲めると思いますよとの情報が。
マジですか。それは行かねばなりますまい…!
ぶっちゃけ旅先でドメーヌ・タカヒコのワインが飲めるとは思ってもいなかった(常連さんにしか行き渡らないものだと思っていた)ので、調べることすらしてなかったんですよね。情報本当にありがとうございます。
お店の方に電話で聞いてみたところ、冬場は日曜日のディナー営業をしていないとのことで、ランチタイムにお邪魔することに。
まずは名物であるヒラガニのトマトクリームパスタと、海老と野菜のカルボナーラ、ピッツァマルゲリータを注文。
店主の奥様曰く赤ワインだからこの料理、白ワインだからこの料理、という勧め方はしていないそうですが、実際にワインと合わせてみて納得。
赤も白も、不思議なことにどの料理に合わせても全然ケンカしないんですよ。実際に味わってみて、これはあえてそう作ってるんだろうなと感じさせるものがありました。
赤ワインの「オ・リー(オリ=澱)」はその名が示す通り、樽澱上部のにごりのある部分のみを集めたもの。ワイン醸造用語の「シュール・リー」をもじった、茶目っ気あるネーミングです。
自園のブドウではなく曽我氏の尊敬するヴィニョロン(ブドウ栽培者)の作ったブドウを使っているため、「ドメーヌ・タカヒコ」ではなく「タカヒコ ソガ」名義になっていますが、そのクオリティは本物。
注いでもらうと、遠くからでもシナモンのようないい香りがふわりと漂います。ボトルにはどのようなブドウが使われているか明記されていませんが、ピノ・ノワール主体でしょうか。
一方でその味わいは、濁りのあるワインとは思えないくらい繊細で、最初「薄い?」と思ってしまったくらい。
しかし口に含んだ後の余韻が長い!勿論濁りのある部分を集めたものなので旨味が強いのは当然といえば当然なんですが、それだけではなく繊細な複雑さみたいなものがありますね。
後から言葉で表現しようとしても無理があるので、その場で書き留めた言葉をそのままペーストしておきます。
「
よく言えば繊細、悪く言えば線が細くて薄く感じるんだけど、薄いかなと思ったら余韻が長く、これは確かに美味い。
バランスが良い。センスが良い。そしてブルゴーニュな雰囲気はあるけど、この繊細さは日本だと感じる。薄くて弱そうに見えてしなやかな強さ。
」
…うん、やっぱその場で思いつくまま書いたものの方が、後から書いた文章より勢いというか強さがありますね。自分でわちゃわちゃ書いた後にこれを貼ってみて気付きました笑。
ちなみにこの「オ・リー」、元々は曽我氏がご近所の方や友人のために作っていたもので、年間の製造本数は僅か100本ほど。通常流通している品ではありません。そういう意味でも大変貴重なワインだと思います。
一方白ワインの「ナカイ・ブラン」も非常に品質が高く、その場で書いたコメントには「やばーい!めちゃくちゃいい香り!」と、女子高生かお前はみたいなコメントが残されていました笑。
実際白い花のような蜂蜜のような香りで、北海道のワイン、しかもケルナー100%でここまでできるのかと。そして赤を飲んだ時と同様、淡いのに芯が強い玄妙な味わい。記憶にバッチリ残ります。
ケルナーは北海道の白ワインでは非常によく使われる品種なんですが、香りが冷涼でピシッとしてて味もそれにそぐわずシャープ、なイメージだったんですよね。思いきり覆されました。
酸味も穏やかというか柔らかでバランスが良く、大変洗練されています。
うーむ、お店にも置きたいなぁ…。
もう少し手に入りやすくなるといいんですが。
最初に飲む北海道ワインがこれなら、旅行で北海道に来た方もワイン飲みたさにまた来てくれそうですよ。北見から遠く離れた余市まで来て、そんなことを思いました。
末筆になりますが、この情報(曽我貴彦氏のワインが余市の一部のお店で飲める)を教えてくれたMさん、本当にありがとうございました。
今回飲んだものであれだけ優美・玄妙な味わいなら、曽我氏が自園のブドウで醸した「ナナツモリ」は一体どんなワインなんだろう?と、勝手に期待を膨らませています笑。
またネットの評価を見ているとブルゴーニュワインと比較する論調が目立ちますが、個人的には淡く繊細でありながら、しなやかで芯が強いこの味わいこそ「日本」ではないか?と強く感じました。
一見薄口でサラッと飲めてしまいそうなのに、余韻は想像以上に長くてかつ飲み飽き・飲み疲れしない。
勿論それだけなら普通のブルゴーニュワインにも沢山ありそうですが、このワインにはそれに輪をかけて、ブルゴーニュのワインには無い独特な繊細さを感じます。日本人の心の琴線に沁み入るものがあるとでも言いましょうか。
味の表現として全く適切ではなく、作り手もそう言われることを特に狙ってはいないでしょうが、どこかに「儚さ」のような要素を感じます。
当店だからこそできるような料理と合わせるなら、蝦夷雷鳥のサラダやスープ仕立てなんかがいいですね。
内臓と血を使ったゴリゴリ濃厚ソースの鴨のローストのような「いかにも」な料理より、蝦夷雷鳥のいい意味での淡さがこのワインには綺麗に寄り添ってくれる気がします。
まぁ、どちらも激レアなワイン&食材なのでそう頻繁に提供できなさそうなのが残念ですが。
うちにあるナナツモリは来年くらいが飲み頃らしいので、次の猟期には蝦夷雷鳥を獲って試してみたいですね。
その時は是非美味しいものが好きなお客様にご来店頂きたいなと思っています。
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